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「純資産の会計」講義用資料の改訂版と主要論点に関する解説

純資産の会計、講義用資料の改訂版

 今日(1月26日)の授業では「純資産の会計」を講義しました。この章については、教科書(第11章)を要約・補足する講義用資料をすでに教室で配布し、このブログにも掲載しましたが、今日の授業では、その改訂版のパワーポイントを用いて講義しました。その6コマ配布資料版を掲載します(教室では、この改訂版は改めて配布はしません。)

講義用資料「純資産の会計」改訂版
http://sdaigo-kougi.cocolog-nifty.com/zyunsisan_no_kaikei_revised20090126.pdf
(赤字の部分が追加箇所です。)

純資産の会計における論点の補足解説

1.資本剰余金と利益剰余金の混同をめぐって
 1月26日の授業では、資本(剰余金)と利益(剰余金)の区別は、①毎期の企業業績を適正に算定するうえでの投資の元本(モトデ)と投資の運用成果(果実)の区別という意味でも、②株主有限責任制度の下で債権者の利益を保護するうえでの維持拘束すべき資本と分配可能な利益の区別という意味でも、企業会計の基本原則であると説明しました。

 ところが、改正会社法は企業の機動的な資本政策を妨げないよう、分配財源の規制を緩和し、その他資本剰余金からの分配も容認しています。さらに、新会社法は資本金・資本準備金を減少させて造成される「資本金及び資本準備金減少差益」をその他資本剰余金に分類することによって分配財源を捻出する道も開きました。これが「資本と利益の区別」の原則と調和するのかどうか議論があるところです。

 しかし、新会社法は、分配財源の規制を大胆に緩和する一方で、資本(剰余金)と利益(剰余金)の区別に配慮した跡も窺えます。それは次の2点に表れています(教科書、258~259ページを参照のこと)。
 ①分配財源に対応した準備金の積立を強制している点。つまり、その他資本剰余金を財源として分配をした場合は、分配額の10分の1に相当する金額を資本準備金に繰り入れ、その他利益剰余金を財源として分配をした場合は、分配額の10分の1に相当する金額を利益準備金に繰り入れることにしたこと、
 ②資本剰余金と利益剰余金を直にクロスする振り替えを禁じていること

 ただ、このような形での資本(剰余金)と利益(剰余金)の混同の規制はあくまでも直接的な振り替えの禁止であって、たとえば、資本金あるいは資本準備金を減少させて造成した「資本金及び資本準備金差益」を累積損失の補てんに充てるために繰越利益剰余金に振り替えた場合は、実質的には、資本金及び資本準備金差益(=その他資本剰余金)を経由して資本金または資本剰余金を利益剰余金に振り替えたのと同じではないかと考えられます(これについては、教科書、268~270ページを参照すること)。

 これについて、わが国の企業会計基準の設定機関である企業会計基準委員会は2002年に公表(最終改正2006年)した企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」の中で次のように述べています。

 「61. ・・・・・・利益剰余金が負の残高のときにその他資本剰余金で補てんするのは、資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないと考えられる。もともと払込資本と留保利益の区分が問題になったのは、同じ時点で両者が正の値であるときに、両者の間で残高の一部又は全部を振り替えたり、一方に負担させるべき分を他方に負担させるようなケースであった。負の残高になった利益剰余金を、将来の利益を待たずにその他資本剰余金で補うのは、払込資本に生じている毀損を事実として認識するものであり、払込資本と留保利益の区分の問題にはあたらないと考えられる。」
 
2.その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主側の会計処理
 上の論点と絡んで、この点が問題になります。これについて、企業会計基準委員会は2002年(2005年改正)に公表した企業会計基準適用指針第3号「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」の中で次のような会計基準を定めています(教科書、262ページ参照)。

 「3.株主が資本剰余金の区分におけるその他資本剰余金の処分による配当を受けた場合、配当の対象となる有価証券が売買目的有価証券である場合を除き、原則として配当受領額を配当の対象である有価証券の帳簿価額から減額する。」
 「4.配当の対象となる有価証券が売買目的有価証券である場合は、配当受領額を受取配当金(売買目的有価証券運用損益)として計上する。」

 このような会計基準が定められた理由は1月26日の授業で説明しましたが、上記の「適用指針第3号」に収録された<結論の背景>の中で詳しく説明されていますので一読しておくとよいでしょう。

企業会計基準適用指針第3号「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」
http://sdaigo-kougi.cocolog-nifty.com/tekiyosisin_no3.pdf

教科書、第11章の誤字の訂正
 
 1月26日の授業中に説明しましたが、教科書の第11章に誤字・誤植がありますので、以下のとおり、訂正を掲載します。

・259ページ、【数値例11-2】の(2)
  (誤) 甲社同じ株主総会の決議により、・・・・・・・・
  (正) 甲社は同じ株主総会の決議により、・・・・・・・・・

・259ページ、【数値例11-2】の下の仕訳の勘定科目
  (誤) (その他資本準備金)
  (正) (その他資本剰余金)

・263ページ、図表11-7の横軸の事項名
  (誤) 権利付定日
  (正) 権利確定日

  (誤) 権利付使日
  (正) 権利行使日 

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